土屋 進悟さん

東日本大震災の被災地を訪れた経験から、環境問題やエネルギー問題に関心をもち化学の道を選びました。

土屋 進悟(つちや しんご)さん 先進理工学研究科 応用化学専攻 本間研究室 修士課程2年 市川学園市川高等学校(千葉県)出身

Q1.化学の道を選んだ理由は?

高校時代に東日本大震災で被害を受けた福島県を訪れた経験から、環境問題やエネルギー問題が今後、非常に重要になってくると感じていました。高校時代から化学が好きだったということもありますが、環境問題やエネルギーの問題の解決に役立つ学問を選びたいと思って、化学の道を選びました。早稲田の応用化学科を選ぶ決め手になったのは、父が早稲田の応用化学科出身で「早稲田の研究はいいよ」というアドバイスをもらっていたことです。

 

Q2.早稲田大学大学院応用化学専攻の修士課程に進学を決めた理由は?

自分の専門性を高めたいというのが大きな理由になります。修士の方が理系の就活には有利だよ、というようなことも聞いていたので、やっぱり修士に進んだ方がいいのかなという曖昧な気持ちはありましたが、決断に踏み込めたのは、学部の時に研究室に配属されてからになります。希望していた「電気化学」の研究室に配属され、環境、次世代エネルギーに関わる研究に取り組む中で、もっと自分の専門性を高めたいという気持ちが明確になりました。

 

Q3.研究テーマを教えてください

環境問題や次世代エネルギーに関わる「熱電変換材料」について研究しています。この研究を選んだ背景としては、高校時代の経験の影響が大きく、学部時代からエネルギー関連の材料の研究に携わりたいと考えていました。
「熱電変換材料」の特質は、温度差やわずかな熱のエネルギーを、直接、電気エネルギーに変換して発電できることです。たとえば、排熱と外気温との温度差を利用して発電できれば、工場全体での電力の省エネを実現することができます。こういったことが主な応用先として見据えられています。実用化に向けては、エネルギー効率を大幅に高める必要があり、そういった部分の改善を目指して研究を進めています。

 

Q4.高校生の時はどのように過ごしていましたか?

勉強以外で力を入れたのは部活です。オーケストラ部に所属してバイオリンを弾いていました。バイオリンを始めたきっかけは、小学生のときに父の転勤でアメリカに滞在していた時期があり、そのときに学校から楽器をやってみないかという誘いがあって、バイオリンを選んだことでした。帰国してからもずっと続けていて、高校の部活ではオーケストラ部で熱心に演奏していました。大学に入ってからも、高校の部活のOBという形で演奏会に参加したりして続けていました。コロナの影響で演奏会などの機会が減っていることもあり、今は、思ったように弾けていないのが残念です。

 

Q5.研究で今いちばんやりがいを感じている点は?

研究している材料は、3つの種類の金属を用いた三元合金のビスマス・アンチモン・テルルという材料になります。高校の化学の授業では絶対に出てこない元素名ですが、周期表にはちゃんと載っています。この材料はまだまだ未知のところが多いので、そういうところを自分が開拓しているという感覚が非常に面白いと感じます。研究においては、自分の研究のオリジナリティが非常に重要で、世の中どこを見ても、自分しかこの研究をしていないんだ、という感覚を持ちながら研究を進めることが多く、自分しから知らない知見がある、というある種の優越感とでも言えるような思いを感じることもあります。やりがいを感じるのはそういうところです。

 

Q6.研究室生活で心に残っているエピソードを教えてください

実験はもちろん学部のときからやるのですが、研究のための実験となると心構えから全く違っていて慣れるまではかなり戸惑いました。たとえば、思った通りの反応が出ないときに先輩方に相談すると、「ビーカーが汚いんじゃないの」と言われてしまいます。見た目にはキレイでも不純物が残っていると実験の結果に影響してしまうんです。ビーカーの洗浄方法も、学部の実験では洗剤で洗ったりしていましたが、研究室ではそんなことは全く無くて、薬品を使って洗浄したりします。さらに、ビーカーに残った水滴をとる作業はどうやるのかも先輩に教わりました。自然乾燥させればいいんですが、急いでいるときは、手で触ると、手の表面の脂分がついてしまうので、窒素ガスをビームみたいにビーカーに当てて壁面を伝わせながら水滴を外に出していきます。他にも整理整頓だったり、実験の細かい作業だったり、言ったらキリがないくらい細かいことが影響してくるので、根本から違っていて驚きました。

 

Q7.ストレスの解消法は?

実験って本当に失敗続きで、学部生、修士1年の時に落ち込みは結構、経験しました。リフレッシュすることは大事だなと学んだので、今は気持ちの切り替えがうまくできているかなと思います。研究室での食事は、お弁当とかになりがちなこともあり、外食して美味しいものを食べにいくのがストレス解消になっています。
研究で行き詰まったときは、自分とは違う研究をしている同級生、後輩、先輩とコミュニケーションをとると、新しい知識などが得られ、そういった知識などを応用してアイデアを考案できたりします。このように、研究室のメンバーとは、日々、毎日のようにディスカッションし、お互い助け合いながら研究を進めています。

 

Q8.将来の夢・進路は?

父の姿を見ていたので、研究者がどういった働き方をしているかのイメージはあって、自分もそういう働き方をしたいと思っていました。修士卒業後は、金属メーカーの研究職として就職することが決まっています。最終面接に行った数社の企業の中で、自分が行きたかった分野、しかも第一志望の会社にご縁があり、研究開発の部署に配属が決まっています。本当によかったなと思っています。

 

Q9.受験生へのメッセージをお願いします

やっぱり自分が興味を持っているものに進むというのが一番かなと思います。興味を持っているものじゃないと身も入らないですし。自分にとっては理系科目というのが面白くて、中でも化学が面白くて、本当に可能性に満ち溢れていると思っていました。実際に自分の可能性を広げてくれたのも学部時代の勉強だったりしたので、そういった意味でも化学系に進んでよかったと思っています。化学という分野は本当にいろんな種類の研究があるので、その中から自分が興味を持てるところを探すのは意外と簡単かなと思います。また、早稲田は研究設備が整っていて、研究に打ち込む環境という意味でも早稲田に来て本当によかったなと思っています。

知識としての化学だけでは終わらない。
使える化学を学んで、鍛え上げられた人材に。