「人工臓器の研究開発」 -医学と工学のハイブリッド-

株式会社 クラレ 河田 一郎
1984年修了

皆さん、会社選びのポイントはなんだと思いますか。私は、やはり自分のやってみたことができるかどうかが重要なポイントになると思います。

私がクラレを選んだのも、学生時代に携わった人工臓器の研究を生かしたかったからです。クラレはメディカル事業を積極的に展開し、新しいメディカル製品の研究開発を積極的に行っており、自分の経験を十分発揮できると考えたのです。入社後、希望通りメディカル研究開発室に配属され、今では新しい人工臓器の研究開発スタッフとして重要な役割を担っています。

私が現在の部署に配属され、与えられたテーマは装置型人工腎臓の研究開発でした。このテーマに取り組むため、配属早々、名古屋大学医学部に研究派遣となりました。メディカル製品を研究開発していくためには、その担当者が医療の現場-特に医師や看護婦などの医療スタッフの苦労、そして何よりも患者さん自身の痛みや苦しみを知らないではすまされません。私はこの研究派遣は自分にとって絶好のチャンスだと思いました。

実際に大学病院では毎日が重体の患者さんとの生死をかけた闘いでした。人工腎臓を装着した患者さんの容体、血液データ等を担当医師とともに見守る-そして患者さんが生還したときには、ほっとした気持ちと人工臓器の開発の喜びをかみしめることができました。こうした大学での経験はその後の研究開発に大きなプラスとなっています。

現在は「これからの人工腎臓」について日夜頭をひねっています。初期の透析治療は「命さえ助かれば」という程度のものでしたが、現在は技術の向上とともに「Quality of Life」が盛んに議論されるようになりました。つまり、より苦痛が少なく、患者さん自身が社会で活躍し、生活をエンジョイできるレベルの人工臓器が要求されているのです。そのためのワンステップとして、現在5時間かかる透析時間を短縮するための研究を進めています。さらに将来は、病院へ行かなくても透析が行える装着型人工腎臓や体内埋込型人工腎臓の開発など可能性は無限にあります。大学病院での貴重な体験を忘れず、文字通り「血の通った研究開発」に取り組んでいきたいと思っています。

知識としての化学だけでは終わらない。
使える化学を学んで、鍛え上げられた人材に。