創立百周年記念事業:学生向け記念講演会

応用化学科の創立百周年記念事業の一環として、学生向け講演会を開催致しました。

 

2017年10月28日(土)14時より、26号館(大隈記念タワー地下)B104室にて、学生62名、教員7名の参加を得て以下の通り講演会を開催致しました。講演会は、まず4人の先生(松方主任教授、宇佐美昭次名誉教授、和田百周年記念事業実行委員、西出同実行委員長)による講演、中央図書館展示室に場所を移して展示会を見学した後、大隈会館楠亭にて懇親会を行いました。

 

初めに松方先生からは、明治15年(1882)の東京専門学校の創立に始まり、難産の末に理工科が新設され、大隈重信侯が応用化学科の創立に踏み切った経緯についての話がありました。今回記念事業に寄せられたご寄付をもとにデジタルアーカイブ化した百年前のアルバムを紐解き、関東大震災で焼失した豊明会記念応用化学実験室の在りし日の姿や学生たちの生き生きした姿を見ることができました。さらに応用化学科の創立・育成に尽力をされた森村市左衛門、小林久平、小倉房蔵の業績紹介があり、応用化学科が入った仮実験室、旧9号館(現6号館)、51号館、65号館を順に見ることができました。特に、今回、「豊明会記念応用化学実験室に掲げられていた大理石の銘板が現6号館に移設された」という小林先生の一文がデジタルアーカイブ化した応化会報(昭和11年10月号)より見出され、この銘板が白寿(99歳)であることがわかったというエピソードが披露されました。

応用化学科名誉教授の宇佐美先生は昔の学生たちの生活の一端を紹介しつつ、人の一生には良いこと、悪いこと様々なことが起こるけれども泰然として生きることの大切さを話されました。また先生はクエン酸発酵の世界的権威ですが、その工業化やキレートレモンの命名に関するエピソードを紹介して下さいました。理工学部長を8年間された時の思い出も我々には新鮮で、先生の温かなお人柄を感じることができました。併せて会場の学生たちを穏やかにしかし力強く鼓舞激励して下さいました。

和田先生は応用化学科創立百周年を記念して開催中の展示会「江戸後期、知の探究者たちが切り拓いた世界」の概要を説明しました。18世紀から19世紀にかけての閉鎖的環境において得られる西洋の知識を単なる翻訳者という立場だけでなく、研究者としての視点で実証的に翻訳をしている姿勢が重要であり、その後の日本の化学産業の急速な発展もこうした先人の努力奮闘に支えられているとの説明がありました。今回、「我が国で初めての〇〇」という視座から科学に関係する多くの古典籍を紹介し、と同時に日本化学会の化学遺産を当図書館がいくつも所有していることも示しました。

最後に、西出先生は早稲田大学にこれらの貴重な古典籍が多く収集されていることの意味を我々が今一度見つめなおし、応用化学科の草創期にまさに文・理の高度な交わりを以て発展してきたことをかみしめることの大切さを説かれました。そして今回の学生向け講演会が学生諸君の将来への重要な起点となるものであるとし、応用化学科の次の百年にむけた発展展開についての思いを述べられ、参加学生たちへの期待を込めてクロージングの言葉とされました。

講演会終了後、本部(早稲田)キャンパスの中を抜け、現6号館で「豊明会記念応用化学実験室」の銘板を確認しながら図書館の展示室に向かいました。展示会場では“何点もの重要文化財を含む生の貴重な古典籍たち”を目の当たりにして驚きの声が多数あがりました。100年を優に超える実験道具、試薬瓶や美しいフォルムのメスシリンダーなどにも多くの学生から感嘆の声が聞かれました。そしてこれら貴重な古典籍が本大学に保管され見学できることの幸せを誰もが感じたものと思います。

その後大隈会館(20号館)の楠亭にて、西出先生の乾杯のもと参加者による懇談が始まり、100年に一度の記念すべき会に参加できたことに対する喜びや本日初めて知ることができた歴史上の事実への驚きや思いを互いに吐露し頷き合っていました。18時には松方主任による中締めの挨拶があり、有意義で充実した記念講演会を無事に終了致しました。

 

参加者(敬称略、順不同)

1)教員  宇佐美昭次、松方正彦、西出宏之、木野邦器、桐村光太郎、和田宏明、青野陸

2)学生   足立裕樹、伊藤陸哉、沓抜佳奈、久保真之、黄驤、小林大介、周律、杉原紘平、陶山翔、髙木有隣、德本彩花、中川慎一朗、野々山慶一、松本寛健、守屋瑛人、若生朋也、池川広樹、内田梨花、奥野将太、坂内良介、坂巻諒輔、田中亮祐、疋野拓也、星川恵美、脇本紗梨、安倍みちる、大和田毬加、岡野太悟、上宇宿雄哉、神守広一郎、金英雄、木村聡、坂本明允、谷村美帆、永江星香、中野佑哉、ハルジョウィノト ダニー、日高光士郎、平田宗雅、前智太郎、増田陸、村本奈穂、渡辺清瑚、梶智子、坂井梨花、佐々木萌、福岡健太郎、古川周平、川村謙太、兒玉聡、齋藤聖也、佐橋祐亮、鈴木 美結、田中徳裕、廣橋武、若松久人、安藤英悟、小池正和、河野友則、中島正貴、牛木涼友、Ataher Ahmed

(応用化学科創立百周年記念事業委員会)

知識としての化学だけでは終わらない。
使える化学を学んで、鍛え上げられた人材に。